(レビュー)-Dyna Force-【Neotenicsound】

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ここ数年個人的にブームがきているメーカー【NeotenicSound】さんのベースプリアンプです。

 

このメーカーさん、もとは【hatena?】という名前でエフェクターを製作しておりました。ベーシストをはじめギタリストやほかの楽器奏者の方も使用するエフェクターを製作しておりました。生産が終了した今でも「ActiveSpice」は人気があります。

 

ところで私が【NeotenicSound】さんを知ったのは2019年。ネットで「hoffman」というエフェクターの見た目に惹かれ買ったことがきっかけでした。機能的にはコンプレッサーやリミッターの役割で、聴覚上はさりげないくらいにうっすらとかかる感じです。が、なんといってもこのエフェクターの一番すごいところは弾き手が気持ちよく弾けるということです。

 

そんなわけでこのメーカーさんには大変興味を持っていたわけです。公式サイトでは試奏システムもありますので是非活用してみてください。簡単に言うとエフェクターを一週間貸してくれるって話です。いつもの自分のシステムで試奏できるわけです。そのあたりの配慮には大変恐れ入ります。

 

さて、本題です。

からの最初に結論を言いますと、私はこのプリアンプから「ベースの良い音ってのはこういう音なのよ」と教えてもらいました。良い音とはもちろん個人によって違うというのは大前提ですが、いわゆる往年のベースサウンドといいますか、、、これまで世界中の人々に愛されてきたベースの音はこういう音だったのかと私自身実感することになりました。ちゃんと説明しないと語弊のある言い方になってしまいますが、以下少しずつ説明します。

 

まず第一印象はとにかく音が太い!しかし巷に溢れる「音が太い」とはずいぶん違います。太さの中に細さもあってちゃんとベースの音がするという言葉にしかなりません。アンプの目の前で聞いているような音がラインで聞こえてくるのでびっくりします。

 

当時、私はDINGWALLのABⅡを使っており、DINGWALL特有?の線の細さがうまく補正されフェンダーにも通ずるイナタイ音が出せてびっくりしました。

 

そして、このプリアンプ、本来のプリアンプの使い方を前提に作られています。昨今の「プリアンプ」という位置づけでありながらエフェクターのような使い方をするプリアンプとは違い、DynaForceはリターン挿しがお勧めです。

どんなアンプを使うかにもよりますが、自分のヘッドアンプを使っていてその内臓プリアンプが気に入っている場合は、ヘッドアンプ側で少し控えめなセッティングにしておくとちょうどいいかもしれません。

 

ちなみにツマミは、

「Level」

「Punch」

「Body」

「Wood」

「Edge」

「Density」

少々見慣れない名前のツマミです。ここでひとつ注意したいのが、どんな動きをするのかイメージができていないと頭の中で予想する音と、耳から聞こえてくる音が乖離してどう調整していいかわからなくなる迷子になる可能性があります。私自身そんな時期が少しありました(笑)

ただ、耳のいい人、もしくは既に「良い音」を知っている人にとっては直観的にすっと飲み込めるのかもしれません。

 

そんな私は、本機のポテンシャルを100%引き出したく【NeotenicSound】さんに直接伺ってきました!※片道7時間。

 

以下、製作者であるいっぺいさんから直々に教えていただいたことです。

  1. 「Level」は12時、それ以外はゼロから始める。
  2. 「Edge」は弦の鳴りとボディの鳴りのバランスをとるもの。人によって爪っぽい音が出る人、肉っぽい音が出る人がいるがそれをこのツマミで調整することができる。上げると音の輪郭が明瞭になる。下げた場合、ベース本体についているトーンのようなレンジが狭くなるという効き方ではなく、あくまで音の輪郭が柔らかく耳当たりが優しくなる。弦を替えたてのときなどこのツマミを下げることで温かい音にしてくれる。下げすぎてモコモコしたり、奥に引っ込んだりすることがないので思い切って下げてみるのもいい。
  3. 「Wood」は上で説明した「Edge」を下げた場合に、木が鳴っているところの豊かな倍音の輪郭も柔らかくなり倍音の立ち上がりが遅くなる。それを補正し耳に届けやすくするのが「Wood」。ここまでで弦の鳴りとボディの鳴りのバランスをとる。
  4. 「Punch」で音のメリハリのハリを決める。
  5. 「Body」で音のメリハリのメリを決める。「Body」は音の膨らみや懐の深さ、奥行き感を調整するもの。「Body」を上げないまま「Punch」を上げると、音のハリばっかりが出てしまう。
  6. 「Density」は、ここまでのセッティングで倍音感やメリハリを作ったが、多少センシティブに弾かなければいけない音になる場合があるので、そんなときこれでしっかり抑え込む。
  7. 最後にもう一度「Level」で、本機の回路の癖や最終的なセッティングをした音をどのくらい押し出すか調整する。例えばアッパーな曲などでは上げめに、アコースティックなどの落ち着きめな曲では下げめにするなど好みで。

これ、私のほかにDynaForceをお持ちの方もぜひもう一度これを参考にツマミ回してみてください!私は、いっぺいさんからツマミの本来の狙いと働きを教えてもらい頭の中のイメージが整いました。その上で本機を再度いじって感動しました。そういうことが起きていなのかと。ツマミを回す順序は重要です。

 

最後に、本機のもう一つの特徴として、すべてフラットなセッティングの状態で既に独特の粘り感があります。これ、最初の話にもつながるのですが、後日、ある楽器店で人生で初めてヴィンテージ楽器と呼ばれるものを弾く機会に恵まれたのですが(1966年以前のヴィンテージ)、実はこれを弾いたときにDynaForceに感じていた同様の粘り感を感じたんです。しかも現行品のベースにはなかったです。こなれた感じというか枯れてるのに粘るというか。そこで自分なりに気づいたわけです。「そうかこれが世界中の人々に愛されてきた往年のベースサウンドなのか…」と。おそらくいっぺいさんはこうした、本人にとっては当たり前かもしれませんが、「いい音」を知っている人なのだなと改めて思いました。

ほかの機種もそうですが、いっぺいさんの莫大な知識と経験からひとつひとつ企画製作されているので、わたしなんかのピヨピヨひよっこには理解しきれない世界が箱の詰まっているわけですね。

 

ちなみにこのDynaForce、ミュート&チューンアウトスイッチやモデルによってはセンドリターンスイッチのみでバイパススイッチがないんですが、これについては、オンオフで信号(音の質)がまったく違うのでバイパススイッチは付けなかったとのことでした。確かにこの音を作っておいて、バイパス音に切り替える場面というのは到底考えられないです。しかもDIなどに送るラインの音がまったく変わってしまうので、トラブル回避のためバイパススイッチはないほうがいいと思いますね。

 

またまたちなみに本機は、ベースマガジン2019年9月号で紹介されています。

お持ちの方は読んでみてください。